採用面接において、応募者の人柄や適性を知るために様々な質問をします。
しかし、中には就職差別やプライバシー侵害につながる「聞いてはいけない質問」、いわゆるNG質問が存在します。
これらの質問は、応募者の能力や適性とは関係なく、本来自由であるべき個人の思想や家庭環境などを理由に採用の判断を下すことにつながりかねません。
適切な採用選考を行うためには、どのような質問がNGにあたるのかを正しく理解しておく必要があります。
なぜ面接でNG質問を避けるべきなのか?3つの重大リスク

面接でNG質問をすることは、企業にとって深刻なリスクを招きます。
不適切な質問は、単に応募者にネガティブな印象を与えるだけでなく、企業の信頼性やブランドイメージを大きく損なう可能性があります。
特に近年では、SNSの普及により情報が瞬時に拡散されるため、たった一つの不適切な質問が経営に影響を及ぼす事態も起こり得ます。
ここでは、NG質問がもたらす3つの重大なリスクについて具体的に解説します。
SNSでの拡散による企業イメージの悪化
不適切な質問を受けた応募者が、その体験をSNSや口コミサイトに投稿することで、情報は瞬く間に拡散されます。
一度「ブラック企業」「コンプライアンス意識が低い」といったネガティブなレッテルが貼られると、そのイメージを払拭することは容易ではありません。
結果として、企業のブランドイメージが低下し、他の優秀な応募者から敬遠されたり、顧客離れを引き起こしたりする可能性があります。
採用活動における一人の面接官の言動が、企業全体の評判を左右するリスクを認識しておくべきです。
法令違反による行政指導や罰則の可能性
応募者の基本的人権を侵害するような質問は、職業安定法や男女雇用機会均等法などの法令に抵触するおそれがあります。
職業安定法では、採用選考にあたって個人情報を収集する際は、業務の目的達成に必要な範囲内で行うべきと定められています。
これに違反した場合、公共職業安定所(ハローワーク)や都道府県労働局といった行政官庁から改善指導が入る可能性があります。
悪質なケースでは、法律に基づく罰則が科されることもあり、法的な観点からもNG質問は厳に慎まなければなりません。
応募者の萎縮による選考精度の低下
不適切、あるいは圧迫的と感じられる質問は、応募者を過度に緊張させ、萎縮させてしまいます。
応募者が本来持っている能力や人柄を十分に発揮できないまま面接が終了すれば、企業は貴重な人材を見逃すことになりかねません。
面接の本来の目的は、応募者の適性や能力を正しく見極めることです。
応募者がリラックスして自分らしさを出せるような環境を整えることが、結果的に選考の精度を高めることにつながります。
NG質問は、この目的の達成を著しく妨げる要因となります。
【一覧】厚生労働省の指針に基づく面接のNG質問集

厚生労働省は「公正な採用選考の基本」の中で、採用選考時に配慮すべき事項を示しています。
これは、応募者の基本的人権を尊重し、就職の機会均等を確保するための指針です。
この指針に基づき、面接で聞いてはいけないNG質問の具体例を項目別にまとめた質問集を紹介します。
これらの質問は、応募者本人の適性や能力とは関係のない事柄であり、予断や偏見を与える可能性があるため、面接の場では避けるべきです。
応募者本人に責任がない事項に関する質問
応募者が自分の努力や意思では変えることのできない事柄について質問することは、就職差別につながる可能性があるため不適切です。
これらの質問は、応募者の能力や仕事への適性を判断する上で全く関係がありません。
出身地や家庭環境といった背景によって、応募者に先入観を持ってしまうことを防ぐためにも、これらの事項に関する質問は避けるべきです。
生まれ故郷や本籍地に関する質問
本籍地や出生地に関する質問は、同和問題(部落差別)など特定の地域出身者に対する差別の背景があったことから、特に避けるべき質問とされています。
「ご出身はどちらですか?」といった一見何気ない質問も、応募者の緊張を招き、差別的な意図を疑われる可能性があります。
業務上の必要性がない限り、これらの情報を尋ねるべきではありません。
必要な場合は、採用が決定した後に、適切な手続きに沿って確認することが求められます。
現在の住居環境(持ち家か賃貸かなど)に関する質問
「お住まいは持ち家ですか、それとも賃貸ですか?」や「間取りはどのくらいですか?」といった住居に関する質問は、応募者の家庭環境や経済状況を探る行為とみなされ、プライバシーの侵害にあたります。
住宅の種類や立地、間取りなどは、応募者の職務遂行能力とは一切関係ありません。
通勤経路や時間を確認したい場合は、「ご自宅から勤務地までの通勤時間はどのくらいですか?」のように、業務に必要な情報のみを直接的に尋ねる形に留めるべきです。
家族構成や職業、健康状態に関する質問
「ご家族の構成を教えてください」や「ご両親はどのようなお仕事をされていますか?」といった家族に関する質問は、家庭環境による予断や偏見を生む原因となるため不適切です。
家族の職業や学歴、地位、資産、健康状態などは、応募者本人の能力や資質とは無関係です。
これらの情報が、採用の可否を判断する材料として使われることがないよう、質問自体を避ける必要があります。
家族の状況が業務に影響するかどうかを採用段階で懸念すべきではありません。
本来は個人の自由であるべき思想・信条に関する質問
思想・信条は、日本国憲法で保障されている個人の内心の自由であり、職業選択においても尊重されるべき事柄です。
これらに関する質問は、応募者の思想や価値観によって採否を判断することにつながりかねず、個人の尊厳を著しく傷つける行為です。
業務の適性とは全く関係がないため、面接の場で尋ねるべきではありません。
支持している政党や信仰する宗教に関する質問
「支持している政党はありますか?」や「何か信仰している宗教はありますか?」といった質問は、思想・信条の自由に直接的に踏み込むものであり、絶対に避けなければなりません。
これらの質問は、応募者に思想調査であるとの疑念を抱かせ、企業への不信感を招きます。
特定の思想や宗教を信仰していることを理由に採用で不利益な扱いをすることは、明確な就職差別に該当します。
採用選考では、個人の内面に関わるプライベートな領域に踏み込んではいけません。
購読している新聞や愛読書に関する質問
「普段、どの新聞を読んでいますか?」や「愛読書は何ですか?」といった質問は、一見すると応募者の情報感度や価値観を知るための一般的な質問に見えます。
しかし、購読紙や愛読書の傾向から、応募者の政治的思想や支持政党などを推測しようとする意図があると受け取られるおそれがあります。
応募者の人柄を知りたいという目的であっても、思想・信条を探るための質問と誤解されるリスクがあるため、避けるのが賢明です。
尊敬する人物や人生観に関する質問
「尊敬する人物は誰ですか?」という質問も、応募者の価値観や人柄を知るための定番の質問として使われがちです。
しかし、誰を尊敬するかという問いは、その人の人生観や思想・信条に深く関わる可能性があります。
特定の歴史上の人物や政治家などを挙げることで、その人の思想的背景を推測されることになりかねません。
応募者の仕事への価値観を知りたい場合は、「仕事において大切にしたいことは何ですか?」など、より業務に直結した質問を用いるべきです。
男女雇用機会均等法に抵触するおそれのある質問
採用選考において、性別を理由に異なる質問をしたり、特定の役割を期待したりすることは、男女雇用機会均等法に違反する可能性があります。
この法律は、募集・採用、配置、昇進などにおいて性別による差別を禁止しています。
性別に基づく固定観念や思い込みから、応募者のライフプランやプライベートに踏み込む質問をすることは厳に慎むべきです。
結婚や出産、育児の予定に関する質問
「結婚のご予定はありますか?」や「将来、子どもは何人くらい欲しいですか?」といった質問は、特に女性応募者に対して行われがちですが、明らかなNG質問です。
結婚や出産の予定は完全に個人のプライベートな事柄であり、それを理由に採用の可否を判断することは性別による差別に該当します。
また、「育児をしながらでも働けますか?」といった質問も、女性に家庭的役割を押し付ける固定観念に基づいているとみなされる可能性があります。
容姿やスタイルに関する質問
「身長はどのくらいですか?」や「今日の服装、素敵ですね」といった、応募者の容姿や身体的特徴、服装に関する発言は、業務遂行能力とは全く関係がなく、セクシャルハラスメントにあたる可能性があります。
たとえ褒め言葉のつもりであっても、相手が不快に感じれば問題となります。
応募者の外見やその日の服について言及することは、選考の場において不適切であり、個人の尊厳を傷つける行為として厳に慎まなければなりません。
つい聞いてしまいがち?判断に迷うグレーゾーンな質問例

法律や指針で明確に禁止されているわけではないものの、質問の仕方や文脈によっては不適切と判断される可能性がある「グレーゾーン」な質問も存在します。
これらの質問は、面接官に悪意がなく、応募者の事情を配慮する意図であっても、結果的にプライバシーの侵害や差別につながるリスクをはらんでいます。
判断に迷う質問例について、どのような点に注意すべきかを解説します。
過去の犯罪歴についての質問
犯罪歴は非常に機微な個人情報であるため、原則として面接で質問することは避けるべきです。
しかし、金融機関や警備会社など、業務の性質上、高い信頼性や清廉性が求められる特定の職種においては、例外的に確認が必要となるケースもあります。
その場合でも、質問の必要性を慎重に検討し、応募者の人権に最大限配慮して対応することが不可欠です。
画一的に全ての応募者に質問するのではなく、業務との関連性を明確にした上で、必要最小限の確認に留めるべきです。
テレワークの可否や希望に関する質問
働き方の多様化に伴い、「テレワークは可能ですか?」や「出社とテレワークの希望の割合はありますか?」といった質問は、勤務形態を確認する上で自然な流れで行われることがあります。
純粋に働き方の希望を確認するだけであれば問題ありません。
しかし、その回答から「育児や介護など、家庭の事情があるのではないか」と背景を深掘りしたり、テレワーク希望者を不利に扱ったりすると、間接差別につながるおそれがあるため注意が必要です。
面接官が不適切な質問をしてしまう心理的背景
多くの面接官は、意図的に応募者を傷つけようとしたり、差別しようとしたりしているわけではありません。
しかし、結果として不適切な質問をしてしまうケースは後を絶ちません。
その背景には、いくつかの心理的な要因や構造的な問題が潜んでいます。
なぜNG質問が発生してしまうのか、その根本的な原因を理解することは、再発防止策を考える上で非常に重要です。
応募者への関心からプライベートに踏み込みすぎる
面接官が応募者の人柄を深く理解しようとするあまり、プライベートな領域に踏み込みすぎてしまうことがあります。
特に、アイスブレイクのつもりで始めた雑談がエスカレートし、家族構成や休日の過ごし方など、個人的な話題に深入りしてしまうケースです。
応募者との距離を縮め、リラックスした雰囲気を作りたいという善意が、結果的にプライバシーの侵害につながってしまうのです。
親近感を示すことと、プライベートに介入することの境界線を見極める必要があります。
採用面接の基本原則を理解していない
採用面接の本来の目的は、「応募者が自社の求める職務を遂行する能力や適性を持っているか」を客観的に見極めることです。
この基本原則への理解が不足していると、面接官自身の興味本位や個人的な価値観に基づいた質問をしてしまいがちです。
例えば、自分と同じ出身地であることに親近感を覚えてその話題を深掘りするなど、評価とは無関係な情報で応募者を判断しようとしてしまいます。
面接は、あくまで職務適性を評価する場であるという認識を徹底することが求められます。
NG質問に関する知識が不足している
最も直接的な原因として、そもそも何がNG質問にあたるのかを知らない、という知識不足が挙げられます。
特に、現場の社員が初めて面接官を担当するような場合、採用に関する法的な知識や厚生労働省のガイドラインについて学ぶ機会がないまま面接に臨んでしまうことがあります。
悪意がなく、純粋な疑問として尋ねた質問が、実は重大なNG質問であったというケースは少なくありません。
全社的に採用に関する正しい知識を共有する体制が不可欠です。
NG質問を未然に防ぐための具体的な社内対策

NG質問によるリスクを回避するためには、面接官個人の注意に頼るだけでなく、組織全体で取り組む体系的な対策が不可欠です。
公正な採用選考を実現するためのルールを明確に定め、それを社内に浸透させる仕組みを構築することが重要です。
公共職業安定所(ハローワーク)などでも公正な採用選考に関する啓発を行っており、こうした外部機関の情報も活用しながら、自社の採用プロセスを見直していくことが求められます。
厚生労働省のガイドラインを社内で共有する
対策の第一歩は、採用に関わる全ての社員が、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」をはじめとする公的なガイドラインを正しく理解することです。
これらの資料を社内研修のテキストとして活用したり、定期的に内容を確認する機会を設けたりすることで、NG質問に関する共通認識を醸成します。
特に、何が不適切な質問にあたるのか、なぜそれが問題なのかという背景まで含めて理解を深めることで、面接官一人ひとりのコンプライアンス意識を高めることができます。
評価基準を明確にした面接マニュアルを作成する
面接官の主観や経験則に頼った選考は、評価にばらつきが生じやすく、無意識のうちにNG質問をしてしまう原因にもなります。
これを防ぐためには、職務ごとに求めるスキルや能力、人物像を定義し、それに基づいた客観的な評価基準を設けることが重要です。
その上で、評価項目に沿った具体的な質問例を盛り込んだ面接マニュアルを作成・整備します。
マニュアルがあれば、面接官は評価すべきポイントに集中でき、余計な質問をする必要がなくなります。
面接官同士でロールプレイングを実施し訓練する
知識としてNG質問を理解していることと、実際の面接で適切に対応できることは異なります。
模擬面接(ロールプレイング)を通じて、実践的な訓練を積むことが非常に効果的です。
面接官役と応募者役に分かれ、実際の面接に近い状況を体験することで、つい口にしてしまいがちな不適切な質問や、応募者を萎縮させてしまう話し方などを客観的に把握できます。
フィードバックを通じて互いの課題を指摘し合うことで、面接スキル全体の向上につながります。
もし面接でNG質問をしてしまった場合の正しい対処法
どれだけ注意していても、うっかり不適切な質問をしてしまう可能性はゼロではありません。
万が一、NG質問をしてしまったことに気づいた場合、その後の対応が非常に重要です。
不誠実な対応は応募者の不信感を増幅させ、問題を深刻化させる可能性があります。
ここでは、ミスが起きてしまった際に、企業のダメージを最小限に食い止めるための正しい対処法について解説します。
質問の意図を説明し、応募者に謝罪する
不適切な質問をしてしまったと気づいた場合は、その場ですぐに率直に謝罪することが最も重要です。
「大変失礼いたしました。今の質問は不適切でした」と明確に非を認めましょう。
その上で、なぜその質問をしたのか、本来確認したかった意図を丁寧に説明し、誤解を解く努力をします。
誠実な態度は、応募者の不信感を和らげる効果が期待できます。
決してごまかしたり、開き直ったりするような態度は取ってはいけません。
応募者からプライベートな話題が出た際の対応方法
面接官が質問したわけではなく、応募者の方から自発的に家族構成や健康状態など、NG項目に該当するプライベートな話題を話し始めるケースもあります。
このような場合、面接官は同調してその話を深掘りしたり、関連する質問をしたりしてはいけません。
話は傾聴しつつも、あくまで業務の適性や能力を判断する材料とはしないという姿勢を保ちます。
そして、適切なタイミングで「貴重なお話をありがとうございます。それでは次に、〇〇についてお伺いします」と、自然に本題へ話を戻す冷静な対応が求められます。
面接NG質問に関するよくある質問

採用面接におけるNG質問は、新卒や中途採用、正社員やアルバイト・パートの採用試験など、雇用形態を問わず全ての選考で注意すべき事項です。
転職活動中の応募者はもちろん、初めて採用試験を受ける高校生や大学生にとっても重要な知識です。
ここでは、面接のNG質問に関して、特に判断に迷いやすいケースや疑問についてQ&A形式で解説します。
アイスブレイクのつもりで家族の話をするのはNGですか?
はい、NGです。
たとえ場を和ませるアイスブレイクのつもりでも、家族に関する質問は応募者本人に責任のない事項であり、プライバシーの侵害にあたります。
家族の話題は避け、天気や会場までの交通手段など、当たり障りのない個人的な情報に抵触しない話題を選びましょう。
応募者からNG項目に該当する話をされた場合はどうすればいいですか?
その話題を深掘りせず、評価の対象にしないことが重要です。
応募者の話に耳を傾ける姿勢は示しつつも、関連する質問は避けてください。
適切なタイミングで「ありがとうございます。では次に仕事内容についてですが」などと、本筋の話題に丁寧に戻す対応が求められます。
オンライン面接で特に注意すべきNG質問はありますか?
基本的なNG質問は対面と同じですが、オンライン特有の注意点として、背景に映るものへの言及が挙げられます。
部屋の様子や本棚にある本、背後に映り込んだ家族などについて質問することは、住居環境や家族構成の詮索とみなされるためNGです。
通信環境など業務に必要な確認に留めましょう。
まとめ
面接におけるNG質問は、採用の時だけ注意すればよいものではなく、企業のコンプライアンス意識そのものが問われる重要な問題です。
不適切な質問は、法的リスクや企業イメージの低下を招くだけでなく、応募者との信頼関係を損ない、結果として優秀な人材を確保する機会を逃すことにもつながります。
面接官は、厚生労働省の指針を正しく理解し、応募者の適性と能力を公正に評価することに集中する必要があります。
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