「オヤカク」とは、内定者の親から入社の同意を得るための企業側の活動を指します。
売り手市場の就活において、親の意見が内定辞退につながるケースが増えているため、有効な対策として注目されています。
この記事では、企業がオヤカクを実践するための具体的な方法や、学生・親の視点を踏まえた注意点について解説します。
オヤカクとは?親の同意を得て内定辞退を防ぐ採用活動のこと
オヤカクとは、「親への確認」を略した就活用語です。
企業が内定を出した学生の親に対して、入社への同意や理解を得るために行う活動全般を意味します。
この採用手法の主な目的は、親の反対による内定辞退を防ぐことにあります。
具体的には、保護者への電話連絡や手紙の送付、会社説明会の開催などを通じて、企業の魅力や事業内容への理解を促し、安心して子どもを送り出してもらうための取り組みです。
なぜ今、採用活動でオヤカクが重要視されるのか?その背景を解説
現代の採用活動において、なぜオヤカクが重要視されているのでしょうか。
その背景には、就職活動における親の影響力の増大や、親子関係の変化、そして売り手市場という採用環境が深く関わっています。
これらの要因が複合的に絡み合うことで、企業は内定者の入社を確実なものにするため、親へのアプローチを無視できなくなっています。
親の意見が内定辞退の大きな要因になっている
近年の就職活動において、親の意見は学生の意思決定に大きな影響を与えています。
実際に、親の反対が内定辞退の直接的な理由となるケースは少なくありません。
株式会社マイナビの調査によると、2023年卒の学生のうち、親から内定先への就職を反対された経験を持つ学生は22.2%にのぼります。
さらに、そのうちの約半数が、親の反対を理由に内定を辞退した、あるいは辞退を検討したと回答しており、企業にとって親への理解促進が内定確保の重要な鍵となっています。
子どもの就職に対する親の関心が高まっている
子どもの就職活動に対する親の関与度は年々高まる傾向にあります。
マイナビが実施した保護者向けの調査資料によると、「子どもの就職活動にどの程度関わっているか」という質問に対し、「とても関わっている」と「ある程度関わっている」を合わせた割合は7割を超えました。
親子間のコミュニケーションが密になり、スマートフォンの普及で情報収集が容易になったこともあり、親が積極的に企業情報を調べ、子どもの就職先に意見を述べることが一般的になっています。
売り手市場で学生優位な採用状況が続いている
少子化などを背景とした売り手市場の継続により、学生が複数の企業から内定を得ることが当たり前になっています。
企業間の新卒獲得競争は激化しており、内定を出しても入社に至らない「内定辞退」は企業にとって深刻な課題です。
このような学生優位の状況下で、企業は内定者の入社意欲を維持・向上させるための内定者フォローに力を入れています。
その一環として、最終的な意思決定に大きな影響力を持つ親の理解を得る「オヤカク」が、有力な内定辞退防止策として重要視されています。
【企業向け】親の不安を解消するオヤカクの具体的な実践方法5選

オヤカクを実践する上で、保護者が抱きやすい「どのような会社なのか」「子どもは大切にされるのか」といった不安を解消することが重要です。
ここでは、企業の魅力や働き方を伝え、安心感を持ってもらうための具体的な方法を5つ紹介します。
これらのアプローチを組み合わせることで、より効果的に保護者の理解を得ることが可能になります。
1. 内定通知書に添える!保護者向けの挨拶状(手紙)を送付する
内定通知書を送付する際に、保護者宛ての挨拶状を同封する方法は、丁寧で誠実な印象を与える有効な手段です。
この手紙には、企業の代表者名で、数ある企業の中から自社を選んでくれたことへの感謝、入社後の育成方針、そして本人の成長を会社として全力でサポートする姿勢などを記載します。
事業内容や企業のビジョンを伝える言葉を添えることで、企業への理解を深めてもらい、保護者の安心感を醸成する効果が期待できます。
2. 内定承諾のタイミングで保護者に電話連絡を入れる
学生から内定承諾を得たタイミングで、採用担当者から保護者へ直接電話で挨拶と感謝を伝えることも効果的です。
このアプローチは「オヤオリ」と呼ばれることもあります。
電話では、入社への感謝を述べるとともに、企業について不明な点や心配なことがないかヒアリングします。
直接対話することで、手紙だけでは伝わらない企業の温度感や誠意を伝えられ、保護者の疑問や不安をその場で解消できる可能性があります。
双方向のコミュニケーションは、信頼関係の構築につながります。
3. 会社の魅力や働き方が伝わるパンフレットを作成・送付する
保護者の世代にも分かりやすい言葉やデザインで、会社の情報をまとめたパンフレットの送付も有効な手段です。
学生向けの資料とは別に、事業内容の安定性や将来性、福利厚生、研修制度、社員のキャリアパスなどを中心に構成します。
若手社員が活躍する様子や、社内の雰囲気が伝わる写真を多く掲載することで、保護者が抱きがちな「どんな会社で働くのか」という具体的なイメージへの不安を払拭し、企業理解を促進します。
4. 保護者も参加できる会社説明会や懇親会を開催する
保護者を対象とした会社説明会や、内定者本人と一緒に参加できる懇親会や社内見学会を企画する方法もあります。
この施策の目的は、保護者に実際に職場環境を見てもらい、経営層や社員と直接対話する機会を提供することです。
内容は、オフィスツアーや事業説明、若手社員との座談会などが考えられます。
企業の透明性を示すことで、書面だけでは伝わらない社風や人の魅力を感じてもらい、安心感と信頼感を高めることができます。
5. 代行サービスを活用する
社内のリソースだけでオヤカクの実施が難しい企業は、専門の代行サービスを活用する選択肢もあります。
専門のカウンセラーなどが第三者の客観的な立場から保護者とコミュニケーションを取ります。
企業の魅力を客観的に伝えたり、保護者の悩みや不安をヒアリングしたりすることで、企業と保護者の間の橋渡し役を担います。
特に、採用担当者が少ない企業にとって有効な手段となり得ます。
オヤカクを成功させるために押さえるべき3つのポイント

オヤカクは、その進め方を誤ると、学生や保護者から「過干渉だ」「おかしい」といったネガティブな印象を持たれかねません。
内定辞退を防ぐという本来の目的を達成するためには、慎重な配慮が不可欠です。
ここでは、オヤカクを成功に導くために、企業が必ず押さえるべき3つの重要なポイントを解説します。
1. 必ず事前に学生本人から同意を得る
オヤカクを実施する上で最も重要なのは、保護者に接触する前に、必ず学生本人から目的を丁寧に説明し、明確な同意を得ることです。
本人の許可なく保護者に連絡する行為は、プライバシーの侵害と受け取られかねず、学生の企業に対する信頼を著しく損ないます。
これは内定辞退に直結するリスクさえあります。
「保護者の方にも弊社のことを知っていただき、安心して入社してほしい」といったように、あくまで学生をサポートする姿勢を伝え、納得を得た上で進めることが大前提です。
2. 内定承諾後など適切なタイミングを見極める
オヤカクを行うタイミングは、慎重に見極める必要があります。
最も適切なのは、学生が内定を承諾し、入社の意思を固めた後です。
選考の途中や内定を出した直後の段階で保護者の情報を求めると、学生に「親の同意がないと内定が出ないのか」といったプレッシャーや不信感を与えてしまいます。
オヤカクは選考プロセスの一部ではなく、あくまで入社を決めてくれた学生とその家族へのフォローアップ施策である、という位置づけを明確にすることが肝心です。
3. 保護者の世代が持つ価値観や不安に寄り添う
保護者世代の多くは、終身雇用や年功序列が一般的だった時代の価値観を持っています。
そのため、知名度の高くない企業や、IT・ベンチャーといった新しい業界に対して、安定性の観点から漠然とした不安を抱きやすい傾向があります。
大手企業や公務員のような安定性を重視する保護者の気持ちを理解し、その不安に寄り添う姿勢が大切です。
企業の将来性や事業の安定性、社会的な意義などを具体的なデータや実績を交えて丁寧に説明し、彼らの価値観に配慮したコミュニケーションを心がける必要があります。
オヤカクを怠ったことによる内定辞退のトラブル事例

親への情報提供や理解促進を十分に行わなかったために、最終段階で内定辞退に至ってしまうケースは実際に発生しています。
ここでは、オヤカクを怠ったことが原因で起こりうるトラブル事例を3つ紹介します。
これらの事例から、事前の対策がいかに重要であるかを理解することができます。
事例1:事業内容への理解不足から親に反対された
BtoBのSaaS系ベンチャー企業に内定した学生の事例です。
学生自身は事業の将来性や社風に魅力を感じていましたが、親は「何をやっているかよく分からない会社」という印象を持っていました。
学生からの説明だけでは親の不安を払拭できず、最終的に「もっと安定した分かりやすい事業の会社にしなさい」と強く反対された結果、学生は内定を辞退しました。
企業側から事業の社会的な価値や成長性を保護者に直接説明する機会があれば、結果は違っていたかもしれません。
事例2:勤務地や転勤の可能性が懸念材料になった
地方出身の学生が、全国転勤の可能性がある営業職で内定を獲得した事例です。
学生本人はキャリアアップのために転勤も厭わないと考えていましたが、親は「地元から離れてほしくない」「頻繁な引っ越しは大変だ」と強く反対しました。
特に、女性の就職に対して、親が勤務地を気にするケースは少なくありません。
企業が事前に勤務地の条件やキャリアプラン、住宅補助などのサポート体制について保護者にも情報提供し、懸念を和らげておくべきでした。
事例3:企業の知名度の低さから不信感を抱かれた
特定の分野で高い技術力を持つ優良な中小企業でしたが、一般消費者向けの製品を持たないため、知名度は低い会社でした。
内定者の親は社名を聞いたことがなく、「そんな会社で大丈夫なのか」と不信感を抱きました。
そして、知名度のある大手企業に就職するよう学生に説得を続け、学生もその影響を受けて内定を辞退してしまいました。
企業の歴史や業界内での評価、経営の安定性などを客観的な情報として提供し、知名度以外の判断軸を示すことが重要でした。
学生・保護者はオヤカクをどう見ている?企業が知るべき本音
企業が良かれと思って実施するオヤカクも、受け手である学生や保護者にとっては、時に「おかしい」「やりすぎだ」と感じられることがあります。
施策が一方的な押し付けにならないよう、それぞれの立場から見た本音や感じ方を理解し、適切な距離感でコミュニケーションを図ることが不可欠です。
【学生の視点】「なぜ親に?」過干渉や個人情報への懸念
学生の中には、オヤカクに対して否定的な見方を持つ層も一定数存在します。
彼らは「自分の就職先は自分で決めたい」「大人として扱ってほしい」と考えており、企業が親に連絡を取ることを過干渉だと感じます。
また、「なぜ親の連絡先まで教えなければならないのか」と、個人情報の取り扱いに対する不安や、企業への不信感を抱くこともあります。
企業はオヤカクが本人の意思を尊重した上での任意協力であることを明確に伝え、強制的と受け取られないよう配慮する必要があります。
【保護者の視点】「どんな会社?」子どもの将来を案じる気持ち
多くの保護者は、子どもの将来を心から案じています。
その根底にあるのは、「入社する企業は本当に信頼できるのか」「劣悪な労働環境の、いわゆるブラック企業ではないか」といった純粋な心配です。
そのため、企業から直接、事業内容や働き方、教育体制について丁寧に説明を受けることは、こうした不安を解消する大きな安心材料となります。
実際に企業からの連絡を「誠実な対応だ」と好意的に受け止める保護者は多く、子どもの選択を後押しするきっかけにもなっています。
オヤカクに関するよくある質問

オヤカクを導入・実施するにあたり、採用担当者が抱きがちな疑問は少なくありません。
ここでは、オヤカクに関するよくある質問とその回答をまとめました。
意図せず「オワハラ」と受け取られないためにも、適切な知識を持つことが重要です。
Q. オヤカクはいつのタイミングで行うのがベストですか?
内定承諾後が最適です。
選考段階での接触は、学生に「親の同意が選考基準なのか」という誤解やプレッシャーを与えかねません。
あくまで、採用活動ではなく内定者フォローの一環として、学生の入社意思が固まった後に行うのが最もスムーズで、トラブルも避けられます。
Q. 学生にオヤカクを拒否された場合はどうすればよいですか?
本人の意思を尊重し、無理強いは絶対に避けるべきです。
学生が反対する理由をヒアリングした上で、例えば「ご両親に説明する際に使ってください」と保護者向けに作成した資料を本人に渡すなど、間接的なサポートに切り替えるのが賢明な対応です。
Q. 保護者に何をどこまで伝えるべきでしょうか?
保護者が最も関心を持つ、企業の安定性や将来性、入社後の働き方や教育体制、福利厚生といった内容を中心に伝えるべきです。
給与や評価といった極めて個人的な情報については、本人の同意なく伝えることは避けます。
あくまで、保護者の安心感を醸成するための情報提供に徹することが重要です。
まとめ
「オヤカク」は、親の意見が子の就職に大きな影響を与える現代において、内定辞退を防ぐための有効な施策の一つです。
しかし、その進め方には細心の注意が求められます。
最も重要なのは学生本人の意思を最大限に尊重し、決して強制しないことです。
その上で、保護者が抱く将来への不安に寄り添い、企業の情報を誠実に提供する姿勢が、企業と学生、そして保護者との良好な関係を築き、最終的な入社へとつながります。
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